恋セヨ乙女 8 - 七地 17歳 - |
次に目が覚めたのは早朝。 揺り動かされる肩に気付き目を覚ますと、目前には超絶美形な彼の顔。 「うわ!び、びっくりした…って、ここは…!!!」 「俺の家。あんた昨日の事忘れたとは言わせないぞ?」 そうだった…結局あのまま泊まっちゃって。(苦笑) 「学校行くんだろ?そろそろ起きないとマズイと思ってな」 「ありがと。一度家に帰らなきゃいけないしね」 「木村さんが朝食用意しといてくれたから、それ食ってから行け」 「ほんと?実はかなーりお腹すいてるかも」 「あんたらしいや。食い意地張ってる所は昔から変わってない」 「酷い!年頃の女の子に向かって言う台詞じゃないよ!」 こんなやり取りしながら私はすこぶるご機嫌な朝を迎えていた。 豪華絢爛な朝食をご馳走になり迷惑をかけた木村さんへ挨拶を済ませると、私は彼の家を後にした。 『今日は学校行くから、絶対にあんたも来いよ』…彼の大きな声を背中に受けて。 自転車を停め、エントランスに入ると…思いがけない人と出くわした。 「叔母さん!こんなに朝早くからどうしたの?」 「どうしたのじゃないでしょ!一体昨日の夜は何所ほっつき歩いてたの!!」 付け入る隙なし。もの凄い剣幕で一気に捲し立てる。 こうなってしまうと、私は静かに怒りが通り過ぎるのを待つしかない。(泣) 「と、とにかく…ここじゃなんだし。部屋行こう?」 ブツブツ言い続ける叔母を引っ張って、何とか私の部屋まで辿り着く。 怒りの鎮まらない叔母をソファーに促し、ミルクたっぷりの紅茶を入れる。 カルシウム採ってもらって、早い所ご機嫌直してもらわないと。(苦笑) 向かい側に腰を降ろしマグカップを2つ、テーブルに並べた。 黙って紅茶を飲む私に向かって、本気でキレてしまった叔母が一言。 「…誰とヤってたの?」 思い切り紅茶を噴出す。 今、何ていった?『ダレトヤッテタノ?』………。絶句。 「黙ってないで何とか言ったらどうなの?17は立派な大人だって口をすっぱくして健ちゃんに教え続けてきたでしょ? 朝帰りするって事は大人の証拠。 逃げも隠れもしないで、とっとと吐いちゃいなさい!!」 「夕香叔母さん……(泣)」 相変わらず論点がズレている。 普通なら帰らない事を心配する筈なんだけど…この人も昔から変わっていない。(トホホ) 叔母さんと呼ぶには申し訳ないほど若くて綺麗な人。 お父さんの年の離れた妹で、私とも16歳しか離れていない。 母方の祖父母に引き取られそうになった私を、20の身空で『この子は私が育てる!』と啖呵を切って引き取ってくれた人。 その時既に父方の祖父母は他界していたため、正に女で1つで私をここまで育ててくれた。 陽気でおっちょこちょいで…色々トラブルを抱えてくる事もしばしばだったけど、この人に育ててもらったお陰で私は寂しい思いをする事が最小限で済んだのだ。 黙ってじーっと私を見つめ続ける。 どっちにしたって、叔母さんには隠すつもりはないのだから話ちゃお。 「…闇己くんの家」 恐る恐る呟くと、一瞬驚いた顔をしたが、すぐさま満面の笑みに変わった。 「よっしゃ〜!!健ちゃんでかした!!(喜)ここまで引っ張っておいてよかったわ〜vv」 「はい?」 「闇己君から大体の話は聞いてきたんでしょ?そのまんまよ。健ちゃんが素敵なレディーになるまでお預けくらわせといたのよ」 素敵なレディーって…。(遠い目) 「だって〜、そうでしょ?健ちゃんが生まれた頃から2人は知るひとぞ知る"許婚"ってやつだったけどさ。 余り若いうちから一緒にいて、どちらかが飽きちゃったら必ず哀しい思いするの健ちゃんよ? 『求められて〜捨てられて〜♪』じゃ洒落にならないもの。 みすみすそんな思いさせたくないってのが親心♪ あそこの家信じられない程お金持ちだし、上手くいったら健ちゃん玉の輿よ? だ・か・ら、今まで闇己君と接触させるの控えてたの」 …………撲殺。(怒) 何がそうでしょなの!!求められて?捨てられて?…余りのドリームぶりに二の句が告げない。 呆れて口を開けている私に向かって、神妙な表情になって叔母は言葉を続けた。 「ホントはね、初めから布椎側が健ちゃんの事引き取りたいって話があったの。 でも…もし健ちゃんが真実を知ってしまった時に、余りにもショックが大きすぎるって私猛反対したのよ。 もし養女になったら、後々その事実について知ったとしても健ちゃんは悲しむもの。 私、闇己君と健ちゃんの"許婚"話聞いてたし。 兄さんと義姉さんが旅行に旅立つ2日前に話してくれたのよ? 『あの2人の将来が楽しみなんだ』ってね。 だから…私にとっては2人の遺言みたいだったんだ。絶対に叶えてあげたいって」 そこで言葉を切ると、やっと紅茶に手を延ばした。 一口飲むと、再び続けた。 「小さな頃から闇己君はしっかり者だったから。健ちゃんもそんな闇己君の事大好きだったみたいだし。 兄さんたちが亡くなったショックで余り昔の事は覚えてないかもしれないけどね。 毎年命日の近辺に彼が訪れる度、私言ってやったの。 『本気で健ちゃんと会いたいなら、彼女に相応しい男になりなさい』って。 健ちゃんは私が立派なレディーに育て上げる。だから君も立派なジェントルマンになれってね。 健ちゃんを泣かせるような男には嫁がせる気更々ないから。 本当に立派な紳士になっていったよ? 毎年顔を合わせる度に精悍になって、男らしくなってさ。 小学6年生になった頃からそこら辺にいる男共とは比べ物にならなかった。 "これならイケルかな?"ってやっとその時に思えたの。 だから、彼の家の前を通る櫻里乃原学園に健ちゃんを入学させたんだよ。 中学2年の時、彼に教えてあげたの。"君の家の前を毎朝通っている眼鏡の女の子が健美だ"ってね。 凄く喜んでた。やっと見る事が出来るって。(笑) 実際に自分の目で確かめて、余計健ちゃんへの想いが高まったらしいしv それでも、直接会うのを許さなかった。 会ったら最後、闇己君…健ちゃんの事攫って言っちゃうからさ。(苦笑) まだ早かったもの…大人の仲間入りするにはね。 大切な健ちゃんを傷つけたくなかったし。身体は大人でも心が伴っていなきゃ意味ないから。 健ちゃんにきちんとした心が養われるには、もうちょっと時間が必要そうだったのよ。 『そろそろいいかな?』って思えたのが今年。 健ちゃんが1人で生活し始めて1年以上。寂しさも知ったし、私と一緒にいたらわからなかった事を知ることも出来たと思ったから。 命日の前日に私に会いに来た闇己君に『合格』のお墨付き出したわ。 彼も素敵な男性になっていたんですもの。 もう、今までのように心配する事ないものね。 何時の間にか2人共素敵な人になってたから。 そして…昨日健ちゃんは大人の仲間入りを果たした…おめでとう。心からお祝い言うわね」 私の隣りに座り、優しく肩を抱き締めてくれた。 知らなかった…そんなやり取りがあっただなんて。 そして心から私を、闇己くんを大切に想っていてくれただなんて…。 嬉しすぎて涙が溢れてくる。 やっぱり…この人には敵わない。(笑) 「ありがと…本当にありがとね?夕香叔母さん」 「泣かないの。これから学校だし、もう大人なんだからさ」 涙を拭ってくれる。 無理矢理微笑むと頭を撫でてくれた。 「想いが通じて良かったわ。でも、急ぐ事ないからね? 闇己君は今から健ちゃんの事攫う気マンマンだろうけどさ、健ちゃんがそれに付き合う必要ナシ。 自分のやりたい事しっかりやってからで十分。 それぐらい待つ甲斐性のない男なら、健ちゃんから三行半つきつけなさい!」 最後まで言いたい事言っちゃう叔母さん。 そんな所が可愛くて…大好き。(笑) 「さ、そろそろ着替えて。準備しないとね」 促されるまま、私は通学の準備をした。 着替え終わり、今日の授業の教科書などを準備し終わった頃、もの凄いタイミングでドアホンが鳴った。 「多分闇己君よ?全く。せっかちな男は嫌われるわよねー」 そう言いながら私の制服の乱れを直してくれる。 「これで大丈夫。今日は今まで以上に可愛いわよ♪」 「ありがと。それじゃ、行って来ます」 「はいはい。鍵持ってね?少ししたら私、ここの戸締りしていくから」 頷きながら靴を履く。 ドアを開けると照れくさそうに立っている闇己くんが視界に入った。 「あら?朝からおあついわね?」 「お、おはよう御座います」 驚きつつもそつなく叔母さんに向かって挨拶する闇己くん。 そんな彼に向かって畳み掛けるように叔母のツッコミが入る。 「これからは健ちゃんをお泊りさせる時は必ず連絡入れさせてね? 親代わりの私を心配させる男はお断りよ。 それから、健ちゃんに携帯持たせること。お互いに連絡とりやすくなるし、私も連絡しやすいから」 「…はい」 素直に頷く彼。 闇己くんにとって叔母は天敵のようなものかもしれない。絶対に敵う筈のない。(苦笑) 助けを入れるように、私は叔母に出かける旨を伝えた。 「遅刻しちゃうから、そろそろ行くね」 「はーいv闇己君、健ちゃんの事宜しくね?」 「はい。泣かしたりしませんから」 今度は自信を持って彼が言った。 それが気に食わなかったのか…玄関を後にしようとする私達に発せられた言葉は… 「そうそう、避妊、しっかりしなさいよ? 私この年で"おばあちゃん"は勘弁だからね。わかった?闇己君!!」 私…一生この言葉、忘れないと思う。(号泣) 続
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chapunの言い訳 夕香叔母さん登場!!(爆) 確信犯です。ええ、間違いなく。(自爆) 次こそ現在進行形の話しに戻ります。 あとちょっとだけお付き合いくださいね!!(土下座) 非難・クレーム…お待ちしております(滝汗)。m(_ _)m |