泣き続ける七地を乱暴に引き剥がす。 涙に彩られた顔で無理矢理微笑んだあんたは…息を呑む程綺麗で居たたまれなくなった。 「何故そんな顔をする?どうして何も言わないんだ?全てを受け入れるだけ受け入れて…後は黙りか?」 それでも…困った顔をするだけなのか? 「あんたを…逃がさないからな」 いつもどこかで気付いてた…俺の元から離れようとする七地の心に。 "お互いの為だから"と呟く七地の姿がありありと想像できてしまった。 「あんたが俺を捨てようとしても…俺は絶対にあんたを放さない」 とうとう言ってしまった…最後通告。 そんな事言えた義理も権利もない。それどころか…ここまで七地を追い詰めたのは俺。 それでも…手放す位なら…閉じ込める。 「……あんたは俺のものだ。どんなに足掻いても…」 「…君だけの…ものにして…」 耳を疑う。 "キミダケノモノニシテ" 初めて聞いた気がした…七地の言葉。 七地の心からの願い。 「もう、自分でもどうにもできないんだ…君を求めすぎて…おれ…壊れちゃった。考えても考えても…答えなんか出なくて…」 叫びに近い告白。 「離れたくないのに離れなくちゃいけない。 初めから判っていた事なのに…。 頭では理解していても心が伴わないんだよ…苦しくていつもどこかで泣いているんだ。 一緒に重ねた時間が幸せすぎて、自分のあるべき場所を見落とした。 君を1番に想うなら……溺れちゃいけなかったのに。 だから、君に愛される事が…辛かった。 その事実が別れを現実にするんだよ…限り在る時間を確実に消費していく。 "今ここで離れてしまえば"…毎日夢に見ていたよ。実際にできるわけないのにね。 もう、君がいなきゃ…呼吸すらできないのに」 諦めにも似た艶やかな笑みが、漂う梔子の薫りが…俺を捕らえる。 続かない現実、限り在る未来… 満ち足りた筈の時間を…後悔させたのは俺。 布椎という檻に捕らわれ、その檻を最大限利用して 美しい翼を断ち切ろうとした…。 現実から…七地を閉じ込める罪から目を背けた。 最後通告は…俺自身へのもの。 檻の中の天使を解き放つか?この手で殺めるか? 答えは……… 鮮やかな笑みを残し、瞳を閉じた七地が呟いた言葉は… 「答えは君の手の中だよ…」 Next → 七地 (シアワセ)
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