花散里で逢いましょう
- プロローグ -


「くれなゐ」 music by VAGRANCY様







「少し…時間をくれないかな?」


精一杯落ち着いた振りして呟いてみる。
今返す事の出来る精一杯の答えだったから。

背中越しに感じる彼の気配が急激に固くなるのを感じる。
そんな事すら判ってしまうのに…まだ答えは出せない。

「いい加減な解答はしたくない。だから…」
「……………わかった」


名残惜しそうに離れていく身体。
搾り出すような彼の声に心が軋んだが、振り切るように離れを後にした。





そう、お互いに限界だったんだ。
君に出会ってしまったら…こうなる事はわかっていたように。

予め決められたレールの上を滑るが如く、加速度的に傾く心。
気が付けば、引き返せないほど…君に夢中になっていた。

年上とか、環境とか…数え上げたらきりない違いも気にならない。
それ程惹かれていく、魅了されていく。

"鍛治師と巫覡の繋がりは切っても切れない"…誰かがそんな事を言っていたのを思い出す。
そうなのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。



だからこそ…確かめなきゃ。自分の気持ちを。
「運命」という名の得体の知れないモノに翻弄されるのは嫌だから。

自分で勝ち取った答えで、君に伝えたい。
「好き」とか「嫌い」だとか、そんな陳腐な表現じゃない、
真実…共に歩いていけるだけの覚悟を持てるかどうか。


1度回り始めた歯車を止める術など知らないから。
ならば…行くしかない。

迷いに決着をつける為、私は懐かしい場所へと旅立った。







□■□■□








辿り付いた場所は櫻舞い散る京都。
今ではもう懐かしささえ感じる…割烹旅館「尼辻」。

初めて彼を知った維鉄谷。
衝撃的な出会いの中、確かに感じた「何か」。
その「何か」がどんな感情であるのか…自覚してしまったのがこの場所だったから。



彼との事を考えるには最も適した地だと思ったのだ。



古式ゆかしい門を潜り抜け、叔父と叔母の眠っていた櫻へと視線を送る。
変わる事なく美しく咲き誇っているその姿が…羨ましくて、どこか妬ましくも見えた。



限られた時間は5日間。
その間に私は選ぶ事ができるんだろうか?
…迷っている暇はない。





打ち水の打たれた石畳を擦り抜け、大きく開かれた玄関へと踏み入った。








chapunの言い訳

まみやさん…ごめんなさいね?続き物しなってしまいました。(滝汗)
短く纏めるのは…む、難しい。(涙)
おまけに「櫻の時期にUPするぞ〜!」と意気込んでいたのに、既に梅雨の走りじゃんよー己!(撲殺)
力及ばず申し訳ないです。

原作の雰囲気を残したままの「乙女七地」の筈なんだけど…。(苦笑)
とっとと2人をくっつけてもいいのですが、それでは「原作に沿った」という事の消化が難しそうで。
2人には思い切り遠回りをしてもらう事になりました。(遠い目)
そんなんでもいいですか?(逝け…己)

少しづつ書き直しているので続きは時間がかかると思われますが、期待せずにのんびり待っていてくださると幸いです。
m(_ _)m




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このワンポイント素材は M's Gallery様 からお借りしてます。