deception
- いかさま4-





エントランスへ辿り着く間も恐ろしい程の視線が俺達に向かって注がれつづけた。
俺はまぁ『いつもの事』と割り切ってしまえば済む事だが、七地に至っては…顔色を白黒させている。(苦笑)

小声で何度も俺に向かって囁く。


『ちょっと闇己君!おれ、バレてるんじゃないの?君の隣りにいたら違和感丸出しだよ〜』


半ベソかいて言うのだから、こちらとしてはたまったもんじゃない。涙に潤ませた瞳の愛らしい事といったら…(自主規制)。
口で色々言い尽くしてもこの分じゃ簡単に納得するわけもなく…七地って変な所で頑固だから。


「そう言うな。誰が何と言おうとあんたはこの世で最高の"メイドさん"だよ。ほら、エントランスだ。お仕事しなくちゃな?」


"これでもか!!"って言うほどの極上笑顔をサービスして、七地の背中を押し出した。
言わずもがな……遠巻きに見ていた連中が蟻の子みたいに寄ってくる。(苦笑)


「うわ!うわ〜!闇己くん!!」
「はい、ビラ配りしろって」
「でも〜!これじゃ…」


"配る"というより、次から次へと勝手に奪われていくチラシ。(爆)
身動きする事もできずに立ち尽くす事5分…ものの見事にお盆は空になった。

肩で息をする七地…ちょっと可哀相に思えてきた次の瞬間だった…。



「へ〜!きちんとタイツまで穿いてるのか?」

声と共に舞い上がる七地の後ろスカート…。

「うぎゃぁぁぁ〜!!」

色気もへったくれもない七地の叫びがエントランスに木霊する。
慌ててスカートを捲った人物に掴みかかろうとすると………最悪。(吐血)
思い切り脱力した俺。とりあえずスカートにかかっていた手だけを外させた。

その場にうずくまりそうになる七地を抱き上げ、諸悪の根源のような連中に睨みを効かせた。


「……何でお前達がここにいるんだ?」
「それはこっちの科白よっっ!!何で、何で健ちゃんがこんな格好してるのよ〜!!私の方が似合うに決まってるじゃないの〜!!(キー!)」
「まぁまぁ夕香さん。落ち着いて…七地さんこんにちはv」
「そうだよ。なかなかお目にかかれる光景じゃねーんだから。せいぜい楽しんだ方がいいだろ?面白そうだしな!」


巫覡軍団勢ぞろい…。(遠い目)
今にも噴出しそうな嵩、いきり立つ夕香、それを押えようとする海津波…どうしてこんな事になったんだ?
情報操作は完璧だった筈なのに。

腕の中の七地を見つめると、一言…

「御免ね…」

ああ…俺の青春の1ページが…こいつらに汚されていく。(泣)

「最後の詰めでしくじったんだな?」

不穏な笑みを浮かべたまま七地を問い質す。

「…かもしれない…。家出てくるときに、自分の机の上に学園祭の案内…置いて来ちゃったから」

引き攣った笑みで答える七地。あんたって…あんたって…盛大な溜息が零れてしまった。

「後で押しおき、覚悟しろよ?」

耳元で囁くと、心底怯えた表情で俺の腕の中から飛びのいた。(苦笑)
それはそうと…こいつらどうしようか?
このままじゃ色々と問題起しそうだから…この際引きずり込むしかないか。
意を決して口を開いた。



「嵩。今"面白そう"って言ったな?」
「は?確かに言ったかも…って…」
「夕香、"私の方が似合う"って言ったよな?」
「言ったわよ!当たり前じゃないの。闇己くん、目が腐ったんじゃないの?(フンッ)」
「海津波…俺の言いたい事わかるよな?(ニコv)」
「く、闇己さん…(滝汗)」



その場にいた夕香以外が凍りつく。してやったりvv
有無を言わさず俺は無茶苦茶な事を言い放った…。



「宗主命令だ。"着いて来い"」
「闇己君…まさか…」


それだけ言うと空になったお盆片手に、空いた手で七地の腕を掴みながら教室へと俺は戻った。





□■□





教室は既に大盛況の真っ只中だった。
まぁ、こんなに可愛い七地がビラ配りしたのなら当たり前だろう。そうじゃなかったら俺が切れる。(苦笑)
いろんなコスプレオンパレードに嵩も夕香も海津波も面食らっているようだ。

メイドに始まり王子?、チャイナ、姫系、執事、ギャルソン、医者、制服、看護婦、袴、巫女、ゲームキャラ、アニメキャラ…挙げたらきりないし、俺の理解の範疇を超えた代物ばかり…。
3人を教室の入り口へと残し、七地だけ連れて(爆)溢れる人を掻き分け森本の傍に歩み寄った。


「お!布椎と七地さん♪お仕事ご苦労様でしたvvお陰でこの有様だよ」
「それはよかった。ついでにもう少し協力してやろうと思ってな。助っ人3人連れてきた。適当な衣装あてがってやってくれないか?」
「それは願ったり叶ったりだね!衣装班の女の子達に準備頼むよ」
「ちょっと!闇己君本気なの?あの3人黙って言う事聞く訳ないじゃないか!」

慌てる七地を尻目に俺は悪びれもなく言い放つ。

「だからさっき言ったんだろ?"宗主命令だ!"って」
「横暴だよ〜!」
「そうでもなさそうだぞ?ほれ、あいつら見てみろよ…」


そう促すと七地と森本は入り口の3人を仰いだ。
既に周囲は人で囲まれており、不躾な視線が注がれまくっていた。(苦笑)
嵩と海津波は照れからか視線が泳ぎ、夕香は女王様のように傅かれまんざらでもなさそうだ。


「どうだ?悪い気はしてないようだぞ?後は七地と森本の説得でどうにでもなる。頼んだぞv」
「そりゃもう、上手く口車に乗せる手なんていくらでも持ってる…失礼。俺に任せてよ!布椎と七地さんに負けない、極上作品に仕上げるからさ♪(喜)」

そう言うや否や森本は猪の如く人波を突っ切って3人の元へと忍び寄って?!行った。



「何だかな〜。でも、みんなで楽しんだ方がいいかもね!」
「…原因はあんたにある。覚悟しとけよ?後でたっぷり可愛がってやるからな(ニコvv)」
「う、ぅぅぅぅ…」

ぐうの音も出ない七地に俺の気分は爽快そのもの♪
ああ…このこくだらない学園祭が終わったら…この姿の七地をそのままお持ち帰りして…!!(喜)
煮て、焼いて、舐めて、かじって、思う存分味わえる!!!!!!(暴走)

いきなりやる気が出てきた。
とっとと自分の役目を果たしてしまうべく七地を隣りに侍らせ、席で注文を待つお客や既に注文品を食べているお客に向かってあいさつ回りなぞやってしまった!

黙ってニコニコ微笑続ける七地。余りの可愛さに携帯番号やメールアドレスを聞いてくる輩には『最強最悪熱視線』をお見舞いして撃沈させる。
悪い虫でもついたらたまらん。(怒)

一通りの席を回り終わると、既に1時間半が経過しようとしていた。昼食時間も間近となり、店内の混雑は一層増してきている。
慣れない作業をした七地は大分お疲れモードに入っているようだ。
人目につかないよう、俯きながら小さな溜息を吐いていた。



「悪い…いい加減疲れたよな?そろそろ昼時だし、気が回らなかった…」
「大丈夫だよ?こんな経験二度とできないだろうし、結構この服装にも慣れて来たからさ」

健気に微笑むその顔…ああ、食べてしまいたい…。(邪)
とにかく少し休ませてやらないと、楽しい思い出作りが出来なくなってしまう。

森本を探すと…いた。
上機嫌で教室の中へと入って来る所だった。


「丁度いい所に戻ってきたな。そろそろ休憩させてくれないか?七地、ちょっと疲れてるから」
「いいよ〜♪君たち2人のお陰で人気投票1位の座は今や確定的vvお疲れ様でした!
それに連れてきてくれたあの3人、これまた素晴らしい逸材だねvvもう、衣装スタッフ狂気乱舞だよ!!嵩君だっけ?彼かなり大きいから多少サイズ調整必要だったんだ。だからこんなに時間かかっちゃって。夕香ちゃんも海津波くんも無茶苦茶可愛いし♪
もう少ししたら3人共準備終わるから、もう休憩行って大丈夫だよ!2時位までのんびりしてきてねvv」


労いの言葉と共に快く送り出してくれた。

やっと思い出作りに突入できる…。
他愛も無い会話をして、そこいらの店を覗いて、ちょこっと買い物したり一緒に食事して…。


「行こうよv思い出作りしないとね♪」


あんたには…言葉が必要ないのかもしれないな。
俺の気持ちを素早く汲み取ってくれるその優しさに…捕らわれているのか。(笑)





人目をはばかりながらも…俺の左手の人差し指をそっと握って…七地は教室の外へと歩き出した。










chapunの言い訳

『やっぱりね〜!』(吐血)な展開です…。

だってさー、夕香が来ない訳ないでしょ?(自爆)闇己の事に関しては絶対に手抜きなんかしそうにないから。(爆)
付き合わされる嵩ちゃんも嵩ちゃんだけどさ。(爆)
なんだかんだ言って、嵩・夕香コンビも大好きなchapunです。(笑)

どんどん収拾つかなくなっていく…(遠い目)
もう少々お付き合いくださいませ。m(_ _)m


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