Compensation

- 償い -



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叶うのなら

君の腕の中で

眠りに着きたい





□■□





壊れていくあんたを留める術を持たない・・・いや、留めたくないのか。

ただ、あんたと共にありたいと願うだけ。

何も変わらない。
俺の目の前では…陽だまりのように微笑む。
両手を差し出せば子猫のように身を寄せ、回される細い腕。


「…………………好き」


甘い媚薬のような囁きが、俺の耳朶を優しく愛撫する。
愛しくて止まない人。

抱き締める腕に力を込めないよう気をつけた。
今のあんたは…折れてしまいそうだから。
もともと線は細かったが、今は………消えてしまいそうな儚ささえ纏ってる。


「遅くなって悪かったな。きちんと飯、食べたか?」


幼い子供をあやすように背中を撫でる。


「好き」
「そうか。一緒に食べるか?俺、晩飯まだだから」
「…好き」
「ちょっと待ってろ。内線で母屋の方に何か見繕ってもらうよう言ってくるから」
「好きっっ」
「七地……。ちょっとの間だぞ?そう、10秒もかからない。な?」
「……………」


不満そうな顔に特上の笑顔で告げると、渋々納得したようだ。
回された腕を優しく解き放つと、部屋の片隅に置かれた電話に近づいて母屋に内線をかけた。
用件を簡潔に伝えたつもりだったが、どうやら10秒以上かかってしまったらしい。


「…お願いしま…あっ」


最後の"す"が言い終わる前に『ツーツー…』。
通話が途切れてしまった。


「七地…」


悪びれもせず、フックに指を下ろしたまま微笑む。
呆然と見つめる俺の手から受話器を引っ手繰ると、そのままフックに降ろし再び腕を首に回してきた。


「…10秒過ぎてたか?」


こくこくと頷く。


「そうか。悪かったな」


額に口唇を落とすとくすぐったそうに微笑んだ。


「今日は月が綺麗だぞ。一緒にみないか?」
「………好き」


パジャマ代わりの浴衣を纏った七地を毛布で包み抱き上げると、縁側から庭に出た。

上弦の月が静かな光を落とし、紅葉に色づきかけた庭木をほんのりと浮かび上がらせる。
設えてある縁台に腰を落ち着け辺りをよく覗えるよう、膝の上の七地を抱きなおした。

背中越しに俺の様子を窺うあんたに囁く。


「あんたとこうやって月を眺めるのも何回目だろうな?…月を眺めるなんて言いながら俺はあんたの事しか見ていないんだけどさ」


苦笑交じりに呟いた言葉は、振り返り様、貪るような口付けを仕掛けた七地の口唇に吸い込まれた。

激しすぎるそれは…まるで命を注ぎ込まれるかのような錯覚を受けて。
身体の芯からは甘い疼きが起こるのに、心は泣いていた。





いつからだろう…こんな風に泣きたくなるのは。
あんたを壊してしまったのは俺。
哀れみを持ってな泣く事など許される筈がないのに…それでも心の中は溢れる涙で溺れそうになる。





"許してくれ"なんて言わないから…せめて聞かせて欲しい。

あんたの声を。
あんた自身の言葉を…。

それが例え罵りだろうが、
俺を致命的に痛めつけるような言葉であっても。





…………… それは全てが終わってからなのかもしれない。

俺の 「償い」 が 終わってから。





少しぼやけた視界に歪んだ月。
まるで 「誰かさんの心」 のようだった。














<chapunのコメント>
これ…無茶苦茶昔に書いた品です。(吐血)
先日chapunがPC内の整理をしていた時発見しました。
プロパティーで作られた日付を見ると…約2年近く前!!(爆)

とりあえず「壊れた七地を愛しむ闇己」を書きたかった模様。
原作の闇己はストイックでストレートな優しさを表現するのは苦手だと思うので、ここでは思い切り激甘な闇己にしてしまいました。(苦笑)

読み返してみると、拙宅にUPしてある既存の話のあっちこっちを継ぎ接ぎしたような内容ですよね。(苦笑)
あの話とかこの話とか…(トホホ)
要するに成長の跡っちゅうもんが無いって事。(自爆)

恥を忍んでUPしてみました!!(開き直り)
何故って?言うまでもなく他の品の作りが思うようにいかんからです。(撲殺)

このお話には続きがあります!!ゲスト様とのコラボ〜♪(歓喜)
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この背景素材は zautra!様 からお借りしてます。