Telephone Line


 「Call」 Music By VAGRANCY様



灯かりを消して、少しだけ窓を開ける。
隙間から入り込む夜気が、風呂上りの上気した肌に心地良かった。


頭からタオルを被ってベッドの隅に腰掛ける。
まだ水滴が零れる髪を片手で乱暴に拭いながら、空いた片手は手馴れた調子で携帯のプッシュボタンを押した。

電話帳登録はしてあるけど…片時も忘れたくない大切な番号だから、必ず自分で打ち込む。



Pururururu…



「もしもし。闇己くん?…」

毎晩欠かさない、眠りに入るための儀式。
どんなに忙しくて時間がなくても、眠くて意識が半分飛んでしまっていても…繰り返される会話。


「まだ起きてた?え?"電話来るまで眠れるか!"って?…相変わらずなんだから…」


たわいもない言葉かもしれない。
でも、おれ達にとっては"睦言"になる。


忙しさからすれ違い続ける生活。
会えない日々が2人の中の不安を色濃くしていくのは事実で…。

" 心まで離れていってしまうのは、重なり合えなくなるのは哀しすぎるよね "

そう言って、毎日おれから電話をかける事にしたんだ。
もう二度と…無意味なすれ違いだけはしたくなかったから…。

" 眠る前のほんの一瞬…君の声を聴かせて " と。



受話器から響く声は、この上なく優しい。


『同じ空…見てるんだよな?』
「うん…君の空とおれの空はおんなじだね」


いつからだろう?
寂しさを紛らわせる為の"呟き"が、愛しさを詰め込んだ"囁き"に変わったのは…。



君とおれは繋がっている。
電話線は…無いけれど、
変わらない大切な"想い"がある限り
『1人じゃない』って…今はもう知っているから。



「大丈夫。今も君と繋がってる…」
『ああ…1人じゃない』



お休みは言わない。

"また明日"

その言葉が真実おれ達に明日をもたらしてくれる。
言霊の力を知っている2人にとって、これほど強い "呪" は他にはないのだから……。



今夜も "また明日" で電話を切る。
新しい…けれど変わることのない "明日" が、
慈愛に満ちた微笑で、待っていてくれるからね。






chapunの呟き

甘甘シリーズ?!第3弾!!(爆)
またまた七地に呟いてもらってます。
言い訳しません!書きたかったから書いちゃいました。(テヘv)

これも大好きな歌からタイトル&作品イメージを拝借してます。(吐血)
タイトルを見て「知ってるぜ!!」と思われた方、私の年バレますね。(爆)


- 小噺部屋 - 


このワンポイント素材は M's Gallery様 からお借りしてます。