あ り が と う







AM 4:00 起床。
身支度を整え道場にて居合の鍛錬。

最近いやいやながらも付き合ってきた嵩が今日はやってこない。
いい具合に続いていたのに、今更ながら音を上げたのだろうか?(溜息)
単に神道流の鍛錬の意味だけでなく、巫覡としての…ま、俺には関係ない。

後で痛い思いをするのはあいつだからな。(怒)



AM 6:30 朝の鍛錬終了。
シャワーで汗を流し、制服に着替える。
特に変わった事なし。



AM 7:00 母屋の食堂で朝食。

今朝は陵子叔母の姿も見えなかった。珍しい。
留守にする時は前もって俺に一言告げていくのに。
よほど急ぎの用件でも発生したのだろうか?

それとなく木村さんに尋ねるも、「お出かけなさいました」とだけ。
俺に話す必要のない事ならば叔母の私用という事なのだろう。いくら宗主だと言ってもそこまで個人のプライバシーに干渉する気は端から無いし。(苦笑)

銀ムツ西京漬の焼き物、蓮と里芋の煮付け、納豆(葱とオクラ入り)、豆腐と若布の赤出汁、出汁巻、京菜のおひたし、香の物、温泉卵、海苔…。
木村さんの作る朝食は味付けも量も完璧だ。(笑)
デザートには特製のくずきり。
甘いものは苦手だが、この程度なら何とか許容範囲。

用意されたものをほぼ完食し、離れへと戻り登校準備。
その後に控えた公務についての資料もバッグに突っ込んだ。



AM 8:00 自家用車で登校。
車を降り際、運転手の高橋さんから飴玉を1つ渡される。

俺が唯一好きな「変わり玉(舐めているうちに飴の色が変わっていくアレ)」をポケットから取り出し、そっと俺に差し出した。
普段は"これでもか!"という程忠実に任務を真っ当するスペシャリストの彼が、わざわざ俺に声をかけ手渡すという事は…なんだろう?思い当たる節がない。(汗)

しかしながら込み上げてくる懐かしさと彼から珍しく感じられた人間臭さに、知らず頬が緩む。
素直に受け取りながら丁寧に「ありがとう」と頭を垂れていた。

3限まで授業を受け、その後公務の為学校を後にする。
相変わらず俺を物珍しそうに見つづけるクラスメートの視線にも慣れた。(苦笑)

帰り際、相川から中間テストの範囲をメモった紙切れを手渡される。
「七人御先」の件があってから、こいつだけは物怖じせず俺と相対してくる。
頼んだわけでもないが一応素っ気無く礼を言うと、真っ赤な顔してもの凄いスピードで教室から飛び出していった。

……なんなんだ?
女の考える事は全くわからん。(溜息)



PM 12:10 待機させていた車で青梅へ。
昼食は木村さんの用意してくれた弁当を車内で食す。

俺の好みを上手く反映させた見た目・味共に最高の弁当。
口下手な俺は日頃なかなか感謝の気持ちを彼女に伝える事が出来ないが(照)、残さず完食する事でその気持ちを表しているつもりで。
しかし…今日は何故かしっくりとこないおかずが二品。

1つはパーティーの時に用意されるような骨付きのターキー。
純和風のおかずが溢れる重箱の中、一際異彩を放っている。
何かのジョークか?(苦笑)
味にはなんの遜色もないので、とりあえず綺麗にいただく。

もう一品は…箸休めとデザートを兼ねているのだろうか?
小さな御椀の蓋を開けると…フルーツみつ豆。
甘いモノが苦手な俺の嗜好を考えて普段はカットフルーツを彩りよく添えてある程度なのに…今日のソレは餡子たっぷり&別容器にクリームまで添えられていて。(唖然)

"残したくない"という心境とは裏腹に…フルーツだけ綺麗に平らげた。(謝罪)



PM 12:50 布椎と縁故のある神社で、月末に控えた例大祭の打ち合わせ。巫覡舞を披露する段取りの確認する。

まだ父さんが健在の頃、たった1度だけ一緒に訪れた事があった。
もっと大きな舞台だった記憶があるが…思いがけず小さな舞台だったのだと気付く。
それなりに時は経ち、俺もまた成長したという事か。

ほんの少しだけ干渉に浸りながら、早々に神社を後にした。

 

PM 14:50 青山にて有力義縁者の所有する会社の本社ビル落成式典に参加。

用意されていたスーツを着込み、筆頭株主として挨拶。
当り障りの無い祝辞を述べたが、思いがけず歳若い俺の姿を見てどよめく会場に終わり際一瞥をくれてやる。(フンッ!)

そのまま接待に雪崩れ込みそうになったが、最強最悪熱視線をお見舞いして切り上げた。

冗談じゃない!こんな香水臭さに汚染された空間に閉じ込められる事早2時間。
いい加減うんざりだ!
それも中途半端に着飾ったエスコート付きだぞ?(怒)
男の俺が逆に女にエスコートされて喜ぶかと思っている神経の図太さが許せん!!
おまけにその女…この俺に激甘スイ-ツばかり食わせたがる!!(激怒)
命知らず甚だしいったらありゃしないっ。

こいつは「危険義縁者リスト」に追加せねば…。(邪笑)



PM 18:20 本日の公務終了。



車中で手っ取り早く着替えると、一気に疲労感が襲ってきた。
普段に比べたら簡単な公務ばかりだった筈なのに…(苦笑)

ポケットの中から、高橋さんに貰った変わり玉を取り出す。
砂糖の塊みたいな飴のはずだが、これだけは好きなんだ。(笑)
口に含むと、上品な甘さが拡がる…それと共にこの飴に託された記憶の数々が自然と脳裏を過ぎっていく。

夏の暑い日、虫取りから帰ってきた俺の口の中に父さんが放り込んでくれる1粒の飴。
約束を守れたご褒美に1つ。怒られた後素直に謝れた時に1つ。
甘酸っぱい思い出の傍らにはかならずこの飴があったから。

つらつらと懐かしんでいるうち、何時の間にか眠っていたらしい。
ふと顔を上げると、既に布椎邸の前だった。
眠っている俺を気遣って、少しばかり夢現の狭間を楽しませてくれた高橋さんの心遣いが嬉しかった。
開かれたドアからゆっくりと降り立ち、軽く会釈をしてから邸内に入った。





■□■□■□■





帰宅の旨を伝えようと母屋へ赴くが…人の気配が全くない。
叔父・叔母・嵩がいなくても、木村さんの存在だけは感じられる筈なのに…

記憶を辿る。
家を出る前に何か言伝を受けただろうか?…否。
出先でも特別な連絡は受けなかったし。

いぶかしんでいると、思いがけない方向から人の気配…これは…。



足早にその方向へと向かう。
今日来るって言ってたか?
ま、思いがけずあんたに会えるって事は俺にとって喜ばしい事だから。

それにしても…なんじゃこりゃ?
七地の他に1,2,3,4…8人!!なんでこんな人数が俺の部屋にいる?!

何となーく嫌な予感がして思わず駆け出す。
勢い良く引き戸を開け、土足のまま自分の部屋に飛び込むと………





『ハッピーバースデー!闇己君(さん)♪』






クラッカーの炸裂音と共に大きな声がかけられた…。









…はい?


「何主賓が突っ立ってるのさっ!さぁさぁ、こっちの"お誕生日席"に座って♪」
「そうよ!ずーっとみんなで待ってたんだからvv」


呆然と立ち尽くす俺の手を七地と夕香が強引に引っ張る。
されるがままに通されたその席は…小学生のお誕生日会のような席!!


「あ〜あ、ったく。靴履いたまんまじゃねーか。これで"宗主"って面されるのかと思うとなー」
「嵩はそうやってすぐ闇己の揚げ足を取るんじゃない!」
「そうですよ?公務でお疲れの所戻って来られたばかりなんですから(苦笑)」


憎まれ口を叩きながら爆笑する嵩。それを諌める叔父と叔母。
慌ててテーブルの下で密かに靴を脱ぎ捨てた。


「全く、闇己さんって七地さんの気配感じると我忘れちゃう所ありますもんねvあ、悪い意味じゃないですっっ!(汗)」


苦笑しながら慌てて言い繕う海津波は、俺の手にグラスを持たせると酒を注ぎいれた。


「ほんとよねvだから夕香が七地さんに焼きもち焼いちゃうのよね?」
「鈍い男はモテナイって事だろ?」
「もう!センちゃんはいつも一言多いの!!」


他のヤツの存在を忘れたかのようなラブラブモードのセンジと美紅。


「そろそろ全員にグラスが渡ったか?それじゃ、改めて七地君の音頭で」


喧騒を収めるかのように脩さんの声が響くと、七地がスーっと立ち上がった。


「えー、僭越ながら音頭を取らせてもらいます!(照)単刀直入に、"お誕生日おめでとう"v
公務に勉強・神剣探しと忙しい日々を送っていると思うけど、君の存在のお陰でここに集まっている皆さんは素敵な出会い・楽しい日々を送る事が出来ています。
君が生まれてきた、今日という日に心から感謝をしています。
改めて…乾杯!!」
『かんぱ〜い!!』


大きな掛け声と共に一気にグラスを空にした。
言葉に表すのは難しいけど…とにかく温かな感情が溢れ出してきた……。





乾杯と共に運ばれてくるのは、海津波と木村さんが腕によりをかけて作り上げた豪華な食事。
差し出されるままに口の中に詰め込み(苦笑)、心遣いに感謝する。


「もしかしてお弁当のターキーも?」
「差し出がましい事してしまいましたが、気付いて頂けて安心しました」


配膳をする木村さんにそれとなく尋ねると、嬉しそうに微笑んだ。
それじゃ…高橋さんのくれた"変わり玉"も…。



食事と談笑の合間に、皆が用意してくれたプレゼントを受け取った。

夕香と嵩と海津波は合同で普段使いの靴を。
MASAKI-MATUSHIMAのシンプルで履き心地の良さそうな品だった。
この3人が選んだにしては合格点だ。(笑)
脩さんはこの靴のイメージに合わせたシンプルな黒のジャケット。
早速羽織ってみると、丁寧な裁断と仕上げのお陰で誂えたようにピッタリだった。
いや…誂えてくれたのか?
いちいち俺の行動に反応する夕香の声が煩いが、とりあえず我慢して頭を下げた。(苦笑)

叔父と叔母からは「日本全国厳選極上日本酒」。
2人のオススメだという一升瓶の山に苦笑を禁じえないが素直に礼を言う。
そのうち七地と一緒に堪能しよう。(笑)

美紅とセンジからは非常に怪しげな紙袋。
開けて中身を確認しようとするが、「1人の時にしろ」というお達しで渋々頷く。
センジ曰く、『絶対に後で役に立つ!』という事らしいが…その発言に笑いを必至に耐えている美紅の様子が印象的だった。
ま、大したものじゃなさそうだが、これまたとりあえず礼を言っておく。
(この品が後々闇己にとって最高に喜ばしいモノであった事はまた別の話♪/神の声^-^)

最後に…一番欲しかった人からのプレゼントを受け取る筈だったが…


「ごめん!今はちょっと渡せないんだよね。(汗)もうちょっと待っててくれないかな?」


とあっさり交わされてしまった。
これは…後でおしおきが必要だ。(ニヤリv)



小さな子供の誕生会のように飾り立てられた室内。
いつも以上に煩く騒ぎ立てる連中。
いつも以上に饒舌な俺。
となりには…大切な人。

思い切り満たされた空間。
優しい人達に見守られながら、自分ではすっかり忘れていた(汗)誕生日はゆっくりと過ぎて行く。





『ありがとう…』






照れ臭くて伝えられない言葉を、何度も何度も心の中で呟いた。







To Be Continued …Next Year.



<chapunのコメント>
激遅すぎてごめんなさいっっ!!(腹切)

とりあえず「みんなでHappy♪」を御題に頑張ってみましたv
拙宅の闇己の扱いは然程悪くないと思いますが、chapunの個人的観念では闇己の扱いって無茶苦茶最低なので、「偶には甘やかせてやろうじゃないか!」と思った訳です。(苦笑)

勿論普通に闇×七のお誕生日話でも良かったんだけど、どうせなら沢山の人にお祝いしてもらえたほうが嬉しいでしょ? (*^-^*)
今回はその他(失礼^^;)の方々にも出張してもらいましたv

chapunのオフライン事情で激遅UPとなりましたが、訪れてくださる乙女の皆様に楽しんでいただければと思いますv


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