真紅の縦糸 -十二国記のお題 3 - |
「っつ…」 思わず口唇を吐いた声に、本来感じた痛みとは違う、苦笑めいた鈍痛を感じた。 「ごめっ……爪…立てちゃった・・・はぁっ…」 切ない吐息と濃厚な蜜を混ぜながら、紡がれる言葉。 快楽と言う名の、甘やかな苦痛に歪められた翡翠の瞳を己の体躯の下に見下ろし男は満足そうに呟いた。 「お気にされるな…この痛みすら、私には甘美な縛めとなりましょう…」 声にならない言葉と汗、淫らな水音と吐息だけが支配する部屋は、2人だけの牢獄。 他者の介入を許さない、自ら取り込まれた檻なのだ。 男の左肩口に刻まれた2本の紅い縦糸。 そう、これは 「 貴女に囚われている 」 という、何物にも代え難い " 縛め "。 「貴女を…求めて止まない…体躯は…貴女に受け容れら…れる事で繋がれる…」 貴女が刻む縦糸に、私は、私が持ち得るその全てを横糸にして この縛めが途切れる事がないように強固な綾織を紡ぐのですよ… 言葉にする事の無い思いは、加速する心と身体を駆け巡り、絶頂という名の孤高の頂に駆け上がった。 ふと、肩に感じる暖かさに、浮遊していた意識を男は手繰り寄せた。 己の腕の中にいるであろうその人が、微笑みを浮かべながら己の肩を撫で擦っていた事に気が付いた。 「主上…?」 「ごめん、起こすつもりはなかったんだ」 羅衫もつけずその美しい裸体を惜しげもなく晒しながら、尚もうっとりと撫で続ける掌には…宝重である碧双珠が握られていた。 「お気になさらずとも宜しいと、先程申し上げた筈ですが?」 苦笑を禁じえず口元を微かに綻ばせると、見上げた翡翠に何とも形容のし難い、ドロドロとした…恍惚の色を見つけた。 「いいんだよ…また刻みつければいいのだから…ね?」 小悪魔のような笑みを浮かべながら寄せられる口唇の甘さに、男はあっけなく篭絡する己を心底幸せだと思った。 そうして、更に深まる縛めからは…既に逃げ出す事などできない事実を改めて互いに確認する事意外の意味はなかった。 終 お題 「 宝重を使いましょう 」
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chapunの言い訳 あ〜あ、やっちゃった…(鬱 相手?乙女の皆様の C=C=C=┌(゜Д゜;)┘(逃亡) |